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マラソンに取り組む市民ランナーの安全10か条 日本体力医学会ガイドライン検討委員会・
公益財団法人日本陸上競技連盟医事委員会

「マラソンに取り組む市民ランナーの安全10か条」は、市民マラソン大会を組織する立場から公益財団法人日本陸上競技連盟医事委員会が草案し、日本体力医学会ガイドライン検討委員会と検討し、両者が共同で策定したものです。

全国で市民マラソン大会が数多く開催され、多くの方が参加し、生涯スポーツのひとつとして定着してきました。しかし、マラソンの楽しさを享受するには安全性も忘れてはいけません。この10か条策定の医学的、社会的背景には、依然としてレース中に心肺停止例がみられること、レース中やトレーニング中に種々の障害が発生すること、メタボリック症候群などの概念が広まったこと、一般人がAEDを含む心肺蘇生法を多く受けられるようになったこと、などがあげられます。

マラソンに取り組む市民ランナーが、レース中に心肺停止などを起こさず安全に楽しく完走できることを支援するため、ランナー自身が自己責任のもとにどのような健康管理をおこなうか、どのようにトレーニングをおこなうか、レース当日にどのように注意すべきか、について"安全10か条"としてまとめました。自らの健康管理とトレーニング管理ができる人がマラソンに参加することができるというのがメッセージの主旨です。

以下に、項目ごとにその主旨を説明します。

健康管理について

1. 普段から十分な栄養と睡眠をとりましょう。

トレーニングで消費されるエネルギーに相当する栄養摂取と疲労回復のための十分な睡眠は欠かせません。特に、炭水化物によって摂取エネルギー量を増やし、たんぱく質を十分に摂取することが必要です。疲労が蓄積するとけがをしやすくなります。疲労回復を考えたトレーニング計画をたてましょう。

大会が冬期の場合にはインフルエンザに注意が必要です。インフルエンザにかかれば大会中に他の人にうつす可能性もあり、治るまで参加はできません。秋には早めにインフルエンザの予防接種を受けましょう。

2. 喫煙習慣をやめましょう。

喫煙は、心疾患の危険因子であり、心臓事故発生の危険性を高めます。また、有酸素運動能力低下の原因になります。レース会場などで喫煙することは、周りのランナーに大変な迷惑にもなります。折角の屋外の気持ち良さが台無しになります。レース参加を機会に喫煙習慣をやめましょう。

3. メディカルチェックを毎年受けましょう。

レース参加やトレーニングは自己責任です。1年に1度は心電図検査を含めたメディカルチェックは必須です。何らかの異常を指摘された場合には、かかりつけ医や循環器内科医師に相談しましょう。

4. 生活習慣病がある方は、かかりつけ医とよく相談しましょう。

心臓病、高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリック症候群などの生活習慣病は運動習慣で改善がみられます。一方で、生活習慣病は動脈硬化をもたらし、レース中の心負荷の増大により、心臓事故につながることがあります。これらの生活習慣病がある方は、参加が可能な状態かどうかを主治医に相談することが大事です。

市民マラソン・ロードレース申込み時健康チェックリスト

(公益財団法人日本陸上競技連盟医事委員会 2013.4.11)

(A)下記の項目(1〜5)のうち1つでも当てはまる項目があれば、レース参加の可否について、かかりつけ医に良く相談してください。かかりつけ医の指導の下、検査や治療を受けて下さい。 レースに参加する場合には、自己責任で行って下さい。

  • 1.心臓病(心筋梗塞、狭心症、心筋症、弁膜症、先天性心疾患、不整脈など)の診断を受けている、もしくは治療中である。
  • 2.突然、気を失ったこと(失神発作)がある。
  • 3.運動中に胸痛、ふらつきを感じたことがある。
  • 4.血縁者に"いわゆる心臓マヒ"で突然に亡くなった方がいる(突然死)。
  • 5.最近1年以上、健康診断を受けていない。

(B)下記の項目(6〜9)は、心筋梗塞や狭心症になりやすい危険因子です。当てはまる項目があれば、かかりつけ医に相談して下さい。

  • 6.血圧が高い(高血圧)。
  • 7.血糖値が高い(糖尿病)。
  • 8.LDLコレステロールや中性脂肪が高い(脂質異常症)。
  • 9.たばこを吸っている(喫煙)。

かかりつけ医とは、皆さんの健康や体調を管理してくれる身近なドクターです。 かかりつけ医をきちんと決めて、各種の検査やレース参加などについて相談しましょう。

レース完走に向けたトレーニング計画

京都市消防局職員及び各消防団がAEDを所持し、コース上に1km毎に待機しています。
また、コース沿道には救急車を配置し、更に、スタート・フィニッシュ会場には高度救急救護車及び人員輸送車を配置しています。

5. 計画的なトレーニングをしましょう。

マラソンは42.195キロ、あなどってはいけません。マラソン大会の時間制限は6〜7時間以内であることが多いので、マラソン完走のための1つの目安は、まずハーフマラソンや20kmが完走できることです。ハーフマラソンや20kmの距離でゆとりをもって完走できることを目指して計画的なトレーニングをおこなう必要があります。

また、走るだけがトレーニングではありません。ウォーミングアップとクーリングダウンをしっかりおこないましょう。マラソンを完走するイメージトレーニングを繰り返し、ペースを乱さない、むやみに走らないセルフコントロールを習得しましょう。

練習中にも事故は起こりえます。練習も2人以上でおこなうのが望ましいでしょう。レース距離が5〜10kmの短い距離では、スピードが速く、その分リスクが高くなり、距離が短いからといって油断してはいけません。

6. 気温、湿度に適したウェアの着用と、適切な水分補給をしましょう。

気温、湿度に適したウェアでトレーニングをおこなうことは、熱中症や低体温症の予防になります。普段準備は本番での対策につながります。熱中症予防の観点だけでなく、完走のためにも水分補給は重要です。暑くても寒くてものどの渇きを感じる前に塩分を含むドリンク補給をしましょう。トレーニング中から水分補給の練習をしておくことも大事です。

7. 胸部不快感、胸痛、冷や汗、フラツキなどがあれば、すぐに走るのを中断しましょう。

トレーニング中に今までに感じたことがない、胸部不快感、胸痛、冷や汗、フラツキを感じた場合は、心肺停止事故の前触れである可能性もあります。走ることをただちに中止し、できるだけ早くかかりつけ医や循環器内科医に相談しましょう。

8. 足、膝、腰などに痛みがあれば、早めに対応しましょう。

レースの走路面はアスファルトです。固い走路でのランニングは足、膝、腰の障害の原因になります。自分の走力にあった適切なシューズをはくことが障害の予防に大事です。また、歩道から車道への段差も転倒の原因になりますので注意しましょう。
足、膝、腰などに痛みがある場合には、まず十分に休むことです。それでも、治らない場合は早めに対応しましょう。
トレーニング中に交通事故に注意するのは当然のことです。特に、夜間は体に反射材をつけるなど身の安全を図りましょう。

大会参加に向けての心構え

9. 完走する見通しや体調に不安があれば、やめる勇気を持ちましょう。

その日の体調が悪い場合や完走する見通しに不安がある場合は、やめる勇気をもちましょう。意外かもしれませんが、心肺停止事故はレース参加のリピーターに多くみられます。初めてではないから大丈夫という過信は禁物です。

安全にレースをはこぶために、レース当日の体調をスタート前にチェックしましょう。下記項目(1〜8)の中で、1つでもあてはまる項目があれば、レース参加を中止するか、慎重にレースに臨んでください。

市民マラソン・ロードレーススタート前チェックリスト

(公益財団法人日本陸上競技連盟医事委員会 2013.4.11)

  • 1.熱がある、熱感がある。
  • 2.疲労感が残っている。
  • 3.昨夜の睡眠が充分にとれなかった。
  • 4.レース前の食事や水分をきちんと摂れなかった。
  • 5.かぜ症状(微熱、頭痛、のどの痛み、咳、鼻水)がある。
  • 6.胸や背中の不快感や痛みがある。動悸・息切れがある。
  • 7.腹痛、下痢がある。吐き気がある。
  • 8.レース運びの見通しが立っていない。

10. 心肺蘇生法を身につけましょう。

レース中やトレーニング中に、心肺停止事故が起こり得ます。心肺停止事故を目撃したら、あなたがまわりの方へAEDを持ってくるように大きく叫び、救急車を依頼してください。AEDが到着するまでの間は胸骨圧迫を行ってください。ランナー同士の互助精神も大事です。心肺蘇生法(AEDの使い方を含む)は誰もが簡単に学べる技法です。1人1人が習っておきましょう。

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